退職金にかかる税金を最小化する3つの方法|2025年版
はじめに
「退職金に税金がかかるの?」「老後資金が目減りしてしまうのでは…」――退職を控えた方、または将来の退職金を考えている方にとって、税金は大きな関心事です。
実は、退職金は給与とは別の優遇税制が適用されるため、正しく理解すれば大幅に税負担を軽減できます。しかし、受け取り方を間違えると、数十万円〜数百万円も多く税金を払ってしまう可能性があります。
退職金2,000万円の場合の税金:
- 勤続30年で一時金受取:約68万円
- 勤続30年で年金受取:約200万円以上
- 差額:130万円以上!
この記事では、退職金にかかる税金の仕組みから、税金を最小化する3つの方法まで、2025年版の最新情報を徹底解説します。
この記事で分かること:
- 退職金の税金計算方法
- 退職所得控除の仕組み
- 一時金 vs 年金、どちらが有利?
- iDeCo・企業型DCとの関係
- 受取時期の最適化
退職金にかかる税金の基本
退職金は優遇されている
退職金(退職所得)は、給与所得とは別の計算方法で税金が計算され、大幅に優遇されています。
優遇ポイント:
- 退職所得控除が適用される(大幅な非課税枠)
- 控除後の金額を1/2にできる
- 分離課税(他の所得と合算しない)
退職金の税金計算式
ステップ1:課税退職所得金額の計算
課税退職所得金額 = (退職金 - 退職所得控除) × 1/2
ステップ2:所得税の計算
課税退職所得金額に対して、所得税の累進税率を適用
ステップ3:住民税の計算
課税退職所得金額 × 10%
退職所得控除額
勤続年数によって控除額が変わります:
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年) |
具体例:
- 勤続10年:40万円 × 10年 = 400万円
- 勤続20年:40万円 × 20年 = 800万円
- 勤続30年:800万円 + 70万円 × 10年 = 1,500万円
- 勤続40年:800万円 + 70万円 × 20年 = 2,200万円
計算例
勤続30年、退職金2,000万円の場合:
退職所得控除 = 800万円 + 70万円 × (30 - 20) = 1,500万円 課税退職所得 = (2,000万円 - 1,500万円) × 1/2 = 250万円 所得税 = 250万円 × 10% - 97,500円 = 152,500円 復興特別所得税 = 152,500円 × 2.1% = 3,200円 住民税 = 250万円 × 10% = 250,000円 合計 = 152,500円 + 3,200円 + 250,000円 = 約40.6万円
勤続40年、退職金2,500万円の場合:
退職所得控除 = 800万円 + 70万円 × 20年 = 2,200万円 課税退職所得 = (2,500万円 - 2,200万円) × 1/2 = 150万円 所得税 = 150万円 × 5% = 75,000円 復興特別所得税 = 75,000円 × 2.1% = 1,575円 住民税 = 150万円 × 10% = 150,000円 合計 = 75,000円 + 1,575円 + 150,000円 = 約22.7万円
方法1:勤続年数を延ばす(最も効果的)
なぜ勤続年数が重要?
退職所得控除は勤続年数が長いほど大きくなるため、勤続年数を延ばすことが最も効果的な節税方法です。
勤続年数別の退職所得控除額
| 勤続年数 | 退職所得控除 | 前年との差 |
|---|---|---|
| 15年 | 600万円 | - |
| 20年 | 800万円 | +200万円 |
| 25年 | 1,150万円 | +350万円 |
| 30年 | 1,500万円 | +350万円 |
| 35年 | 1,850万円 | +350万円 |
| 40年 | 2,200万円 | +350万円 |
20年を超えると、1年あたりの控除額が40万円→70万円に増加
税負担の比較
退職金2,000万円の場合:
| 勤続年数 | 退職所得控除 | 課税退職所得 | 税金 |
|---|---|---|---|
| 25年 | 1,150万円 | 425万円 | 約96万円 |
| 30年 | 1,500万円 | 250万円 | 約41万円 |
| 35年 | 1,850万円 | 75万円 | 約4万円 |
| 40年 | 2,200万円 | 0円 | 0円 |
30年勤続と25年勤続の差:55万円の節税!
勤続年数の数え方
1年未満の端数は切り上げ
- 29年6ヶ月 → 30年
- 34年1ヶ月 → 35年
⚠️ 注意: 定年退職日が年度途中の場合、あと数ヶ月で勤続年数が1年増えるなら、退職日の延期を検討する価値あり
方法2:一時金と年金、どちらで受け取るか最適化
退職金の受取方法
退職金の受取方法は、主に3つ:
- 一時金(一括受取)
- 年金(分割受取)
- 一時金 + 年金(併用)
税金の計算方法の違い
| 受取方法 | 課税方法 | 控除 |
|---|---|---|
| 一時金 | 退職所得(分離課税) | 退職所得控除 |
| 年金 | 雑所得(総合課税) | 公的年金等控除 |
一時金受取のメリット・デメリット
メリット:
- 退職所得控除が使える
- 課税所得が1/2になる
- 分離課税で税率が低い
- まとまったお金が手に入る
デメリット:
- 一度に使い切るリスク
- インフレに弱い
年金受取のメリット・デメリット
メリット:
- 毎年一定額が受け取れる(安定)
- 長生きリスクに対応
デメリット:
- 雑所得として総合課税
- 他の所得と合算されて税率が高くなる
- 社会保険料(健康保険・介護保険)がかかる
シミュレーション
退職金2,000万円、勤続30年の場合:
パターン1:全額一時金
退職所得控除:1,500万円 課税退職所得:(2,000万円 - 1,500万円) × 1/2 = 250万円 税金:約41万円 手取り:約1,959万円
パターン2:全額年金(10年間、毎年200万円)
年金200万円 + 公的年金(夫婦で220万円)= 年間420万円 公的年金等控除:110万円 課税所得:310万円 所得税・住民税:約46万円/年 社会保険料:約50万円/年 10年間の合計負担:約960万円 手取り:約1,040万円
一時金の方が約900万円も有利!
最適な受取方法
基本的には一時金が有利ですが、以下の場合は年金も検討:
- 退職所得控除を使い切っても多額の退職金が残る
- 公的年金が少なく、雑所得が低い
- 長期の安定収入が欲しい
推奨: 退職所得控除の範囲内は一時金、超える部分は年金
方法3:iDeCo・企業型DCとの調整
iDeCo・企業型DCの受取時も退職所得控除
iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型DC(確定拠出年金)を一時金で受け取る場合も、退職所得控除が適用されます。
問題:退職所得控除の重複
同じ年に退職金とiDeCoを受け取ると、退職所得控除の調整が必要
調整ルール
①加入期間が重複している場合
退職金とiDeCoの加入期間が重複している部分は、退職所得控除額から重複期間分を差し引き
②受取時期が14年以内の場合
先に受け取った方の退職所得控除のみ適用、後の受取は控除額が減額
具体例
勤続30年の退職金2,000万円を受取後、すぐにiDeCo(加入15年、500万円)を受け取る場合:
退職金の税金:
退職所得控除:1,500万円 課税退職所得:250万円 税金:約41万円
iDeCoの税金:
iDeCo加入期間:15年 通常の退職所得控除:600万円 しかし、退職金と重複期間(15年)があるため、 実際の控除額:0円 課税退職所得:500万円 × 1/2 = 250万円 税金:約41万円
合計税金:約82万円
最適化の方法
戦略1:受取時期を5年以上ずらす(改正前)
2024年までのルール:
- 退職金とiDeCoの受取を5年以上ずらせば、別々に退職所得控除が適用できる
2025年からの改正:
- 間隔が15年以上に変更される予定(2025年1月以降の受取から適用)
戦略2:iDeCoは年金受取にする
iDeCoを年金受取にすれば、雑所得として公的年金等控除が適用されます。
メリット:
- 退職所得控除との重複を避けられる
- 公的年金が少なければ、税負担が少ない
デメリット:
- 総合課税のため、他の所得と合算
- 社会保険料がかかる
戦略3:iDeCoは60歳で受取、退職金は65歳で受取
60歳でiDeCo受取:
退職所得控除(15年):600万円 iDeCo(500万円)は全額非課税
65歳で退職金受取(勤続35年):
退職所得控除:1,850万円 退職金(2,000万円) 課税退職所得:(2,000万円 - 1,850万円) × 1/2 = 75万円 税金:約4万円
合計税金:約4万円(受取を調整しない場合は約82万円)
節税効果:約78万円!
企業型DCがある場合
企業型DCとiDeCoを併用している場合:
- 企業型DCの一時金は退職金と同じ扱い
- iDeCoは別途調整が必要
推奨:
- 企業型DC:退職と同時に受取(退職金と合算)
- iDeCo:5年以上(できれば15年以上)ずらして受取
受取時期の最適化まとめ
パターン別の最適戦略
パターン1:退職金のみ(iDeCo・企業型DCなし)
最適: 退職時に一時金で受取
パターン2:退職金 + iDeCo
最適:
- iDeCoを60歳で一時金受取
- 退職金を65歳(または60歳から5年以上後)で一時金受取
または:
- 退職金を一時金受取
- iDeCoを年金受取(公的年金が少ない場合)
パターン3:退職金 + 企業型DC + iDeCo
最適:
- 退職金 + 企業型DCを同時に一時金受取(65歳)
- iDeCoを60歳で一時金受取(または年金受取)
パターン4:退職金が退職所得控除を大幅に超える
最適:
- 退職所得控除の範囲内を一時金受取
- 超過分を年金受取
よくある質問(FAQ)
Q1. 退職金から税金は天引きされる?
はい。「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出すれば、正しい税額が天引きされます。
提出しないと、20.42%が一律で天引きされ、後で確定申告が必要になります。
Q2. 退職金の確定申告は必要?
「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、原則不要です。
提出していない場合は、確定申告で精算します。
Q3. 転職した場合、勤続年数はどうなる?
基本: 前職の勤続年数は引き継げません。
例外: 同じ企業グループ内での転籍など、一定の条件を満たせば通算できる場合があります。
Q4. iDeCoと退職金、同時に受け取ると必ず損?
改正後(2025年〜):
- 受取間隔が15年未満の場合、退職所得控除が調整される
- 同時受取でも、合計額が退職所得控除内なら税金ゼロ
小規模なiDeCoなら同時受取でも問題ない場合もあります。
Q5. 65歳まで働いて退職金を受け取る予定。iDeCoはいつ受け取るべき?
2つの選択肢:
選択肢1: iDeCoを60歳で受取 → 5年後に退職金受取(改正前のルールで有利)
選択肢2: 退職金を65歳で受取 → iDeCoを75歳(または80歳)で受取(15年以上空ける)
推奨: 選択肢1(60歳でiDeCo、65歳で退職金)
まとめ:退職金の税金を最小化する3つの方法
退職金にかかる税金を最小化する方法を解説しました。
📌 重要ポイント:
方法1:勤続年数を延ばす
- 20年を超えると控除額が大幅アップ(1年70万円)
- 可能なら40年勤続を目指す(退職所得控除2,200万円)
方法2:一時金受取を優先
- 基本的には一時金が有利(退職所得控除 + 1/2課税)
- 年金受取は総合課税で税率が高くなる
- 退職所得控除の範囲内は一時金、超過分は年金
方法3:iDeCo・企業型DCとの受取時期を調整
- 2025年改正:受取間隔15年以上空けると退職所得控除が別々に適用
- iDeCoを60歳、退職金を65歳(75歳)で受取るのが最適
- またはiDeCoを年金受取にする
節税効果の比較(退職金2,000万円、iDeCo500万円の場合):
- 同時受取:税金約82万円
- 5年以上空ける:税金約41万円
- 節税効果:約41万円
今すぐできること:
- 自分の勤続年数と退職所得控除額を確認
- 退職金の見込額を会社に確認
- iDeCo・企業型DCの残高と受取予定時期を確認
- 受取時期の最適化シミュレーションを実施
退職金は老後の大切な資金です。賢く受け取って、税負担を最小化しましょう!
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